ABWとは?導入メリット・デメリット、導入の流れを解説

ABWとは?導入メリット・デメリット

社員が場所や時間を選ばずに働ける「ABW」について、詳しく解説します。フリーアドレスとは違う働き方には、どんなメリットがあるのか。また、ABWを導入するにあたって想定されるデメリットや注意点についても、事前に理解しておきましょう。
社員にとっては時間や場所にしばられることがなく、企業にとってはコスト削減にもつながるABWを導入するかどうかについて、この機会にぜひ検討してみてください。

目次

  1. 1.ABWとは
  2. 2.フリーアドレスとの違い
  3. 3.ABWのメリットとデメリット
  4. 4.ABW導入の流れ
  5. 5.ABW導入の注意ポイント
  6. 6.まとめ

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1.ABWとは

ABWとは「Activity Based Working」の頭文字から略した用語です。仕事の内容や目的に合わせて、場所や時間を自由に選択できる働き方を指します。
毎日決まった時間にオフィスに出社する必要がない新しいスタイルは、オランダの会社にて誕生しました。仕事の目的に合わせて、自ら働く場所を選択します。
たとえば企画のアイデアを誰かに相談したいときには、昼間の時間を使って人の多い場所に行く。細かな作業に集中したいときには、早朝に一人静かにいられる作業室に行くなど、自由に時間と場所を選んで仕事の効率化を図ります。
社員全員が定時に出社する必要はなく、場所も問わないので、オフィスにいることを必須としません。自宅はもちろん、コワーキングスペースやカフェなどで仕事をしても構わないのです。
より働きやすくなるよう時間と場所を指定しない方法は、働く人の都合や気分にもあわせられます。家族の事情に合わせて自宅で仕事をする。煮詰まった気持ちをリフレッシュさせるためにカフェに行く。こんな自由な働き方も叶います。
ワークスタイルとライフスタイルをより充実させられる新しいスタイルABWは、すでに導入を始めている日本企業も実在していますので、国内でも今後取り入れる企業はますます増えていくのかもしれません。

2.フリーアドレスとの違い

ABWとフリーアドレスの違い

ABWのスタイルは、フリーアドレスに似ていると思われた方もいるでしょう。 フリーアドレスはオフィス内に社員が個々の自席を持たず、自由に空いている席を利用する働き方のことです。オフィス全体がフリーアドレスという企業もあれば、一部だけフリーアドレス制にして、部署によっては固定席のままという企業もあります。フリーアドレスの場合はオフィスに出社し、各自好きな場所、仕事に都合の良い場所を選んで作業をおこないます。
ABWはオフィス以外の場所も働く場所として選択できるので、オフィス内にこだわる必要はありません。自宅だけでなく、カフェやファミレス、サテライトオフィスなどが選べます。
フリーアドレスの場合には社内にいることが必須となりますが、ABWは社外での仕事も可能なため、出社せずに自宅にて仕事をすることも可能です。外回りが必須の営業などは、複数の訪問先を回りながら一度もオフィスに戻らず、最寄りのワーキングスペースにて事務作業をおこなうことも可能になります。フリーアドレスよりも自由度が高くなり、社員一人ひとりの働き方もより多様化するでしょう。会議や打ち合わせの際には、オンラインミーティングができるコワーキングスペースを利用するという手もあります。
社内にいることを必須としない業務ならば、フリーアドレス以外にABWというワークスタイルの導入を検討してもいいでしょう。

3.ABWのメリットとデメリット

メリットが多く目立つABWですが、デメリットもあります。ABWを導入する前に、メリットとデメリットの両面を確認しておきましょう。

【ABW導入のメリット】
時間と場所を選ばないABWのメリットを、さらに細分化して分かりやすくご紹介します。

・社員一人ひとりの生産性がより高まる

同じ作業をする場合にも、人によってそれぞれ最適な作業場所や時間は異なります。事務作業に集中したいときに誰もいない静かな狭い空間にて早朝に仕事を進める方もいれば、人が多い時間帯の開放感あふれる場所で、雑音を聞きながら仕事をしたいという方もいます。
個人の好みや性格などによって時間帯や場所は変わるため、それぞれが適した働き方を選べるようになると、個々の生産性はより高まるでしょう。
社内にて誰かに話しかけられたり、電話の応対に集中力が途切れたりする心配もありません。
同じオフィスで同じ時間にて働く必要がなければ、個人にあった働く環境を提供した方が、今までの作業がより効率化します。

・社員の発想力が変わる

いつもと同じ場所と同じ時間に作業をするとマンネリ化してしまい、思考も凝り固まるようになります。気分転換にと場所を変えるだけで、良いアイデアがひらめたいという経験は、多くの方が体験しているでしょう。 単調な作業でオフィス内では眠気を催してしまっても、違う場所に移動するだけで集中力が戻ってくる場合もあります。
オンラインミーティングもそれぞれが社内とは異なる場所で意見を言い合うと、これまでとは違った意見が出てくるかも知れません。自宅やコワーキングスペースでリラックスすることで、これまでとは違った視点で意見を交わし合えるようにもなります。いつもと同じ仲間と同じ場所で仕事をするよりも、外の世界で新鮮な空気に触れることで発想力も変わります。新しいアイデアや改善策が必要なときに最適な環境を提供できるよう、ABWを取り入れてみるのもいいかもしれません。

・ライフスタイルが充実する

在宅勤務が可能になれば、通勤時間も削減できるようになります。そのぶん自由な時間が増えるので、よりプライベートな時間を充実させられるようになるでしょう。
自宅から最寄りのカフェやコワーキングスペースで仕事をするだけでも、通勤時間を短縮させることができます。業務終了後のプライベートな予定に合わせ、約束相手との待ち合わせ場所近くで仕事をするというスタイルも可能です。
子育てや介護をしながら働く方も、家族の状況に応じて自宅にて仕事ができるようになると、より安心して働けるようになります。社内の誰かに業務をお願いすることなく、自宅で空いた時間に作業を進められます。 仕事とライフスタイルのバランスが取りやすくなり、時間や場所に悩むストレスが軽減されるかもしれません。
自分にあった上手な働き方を見つけることで、仕事を充実させながらも、プライベートな時間をより楽しめるようになるでしょう。

・オフィス縮小化によるコスト削減

フリーアドレスよって場所を固定しないABWは、社員の固定席をより減らせるようにもなります。最低限のスペースでも問題なければ、思い切ってオフィスを移転する検討をしてみてもいいでしょう。
オフィスの規模を小さくすることは、大きなコスト削減にもつながります。家賃はもちろん、電気代や水道代といったコストも減らせます。
企業にとっては大きな経費削減となり、ABWによって生産性が向上した社員へ還元できるようになるかもしれません。

ゾーニングやレイアウトのポイント

【ABW導入のデメリットと解決策】
メリットが目立つABWですが、導入する前にデメリットもおさえておきましょう。
想定していたメリットが感じられなかったという事態にならないよう、事前にしっかりとデメリットと解決策についてもおさえておいてください。

情報漏洩のリスクが高まる

社外にて業務をおこなうことで、社内の情報が漏洩するリスクは高まります。パソコンや資料の紛失だけでなく、公共の場でパソコン画面を開いたまま離席する恐れもあります。
人の多い場所で取引先と電話をし、うっかり周囲に機密情報を漏らしてしまうケースも。社内ではなにも問題なかった行動が、社外では大きなリスクになります。
ABWを実施する前には、社員のセキュリティ意識を高めること。対策講座を開き、具体的なセキュリティ対策についてしっかりと共有する必要があります。ツールの管理やより強固なセキュリティ対策の導入、紛失対策やウイルス感染対策などもおこなわなければなりません。情報の扱い方やパソコンなどの機器を管理するルールを徹底し、社員一人ひとりが意識を高められるよう、しっかりと教育していきましょう。

勤怠管理や評価体制の変更

これまでどおりの勤怠管理ができなくなるため、新しいシステムが導入されることになります。タイムカードで時間を管理することが難しくなるため、新たな勤怠ルールを設定しなければなりません。上司の目が届かない場所にて業務をおこなうので、働きぶりや個々の資質を確認できなくなります。これまでとは異なる視点にて評価しなければならないため、迷う場面も多々出てくるでしょう。
社内にてどのように勤怠管理をおこなうのか、評価についてはどう変えていくのかを改めてルール化し、社内全員が把握できるようにしておいてください。

社員同士のコミュニケーションが希薄になる

同じ時間にオフィスで顔を合わせるからこそ、自然とコミュニケーションもとりやすくなるものです。顔を合わす機会が減ると、社員同士のコミュニケーションが希薄になる恐れもあります。
上司の目が届かない場所にて、悩んでいる社員もいるかもしれません。同僚や社員が気づけず、業務に支障をきたすケースもあります。
同じオフィス内にいれば誰かが気づいてすばやくフォローできることも、周囲に人がいない状況では難しい場合もあります。
上司も部下の管理が難しくなり、仕事の進捗状況を確認しにくくなるかもしれません。
離れた場所にいてもコミュニケーションがとれるよう、定期的なオンラインミーティングを設定したり、気軽に話せるチャットツールを活用したりするのもひとつの手です。
ランチ会やイベントなどを設定し、リアルに会える場を作るなど、コミュニケーションがとれやすくなる工夫してみましょう。普段は会えなくても円滑なコミュニケーションがとれるよう、自社にあった方法を見つけてみてください。

ABWという新しい働き方を反対される

社員にとってメリットが大きいと思われるABWですが、新しい働き方は必ずしも歓迎されるとは限りません。従来の働き方が変わることに不安を覚え、反発する社員もでてくるでしょう。または新しい働き方になじめず、これまで通りのワークスタイルを貫く社員もいます。
せっかくコストをかけて体制を整えても、肝心の社員がABWを理解できず、実践に踏み込めなかったらメリットも感じられません。
時間をかけて理解を促し、社員同士がルールや導入について一緒に考えながら、皆で新しいワークスタイルをスタートできるよう進めてみてください。

4.ABW導入の流れ

ABWを導入する前に、全体の流れを確認しておきましょう。オフィス全体をどのように整備すべきか検討するだけでなく、社内制度の見直しなどもしっかりとおさえておいてください。

・ABWを導入する目的を明確にする

なぜ、ABWを導入するのか。その目的を明確にすることが大切です。ABWのメリットだけにとらわれてしまい、ただ導入をしてもうまく運用しない恐れがあります。
生産性の向上や作業の効率化、コスト削減や社員のワークバランスの見直しなど、導入したらどのような効果が期待できるかを明確にしておきましょう。
会社がABWを導入しても、実践するのは社員です。自社にあった課題や目的をリストアップし、ABW導入によって解決できるかどうかを検討してみてください。

・オフィスの現状を把握

いま現在の働き方や働きやすさ、課題について社員の意見を聞いてみてください。アンケート形式や診断ツールなどを用意し、現状を把握しておきましょう。
同時にスペースの使い方は適切か、無駄な座席や稼働率が低い会議室をピックアップします。
職場環境に社員が抱えている課題、コストや部署内のコミュニケーションなどについてもヒアリングしておく必要があります。

・新しいオフィスレイアウトを決める

オフィスがABW型になると、従来のレイアウトとはまったく異なる形になります。出社した社員が自由に使えるよう、フリーアドレスタイプの座席が必要になるでしょう。
一人で集中できる個人ブースに、コミュニケーションがとりやすいカフェスペース。部署内ですぐに集まれるミーティングテーブルなどを設置します。
必要な席数に電源の確保、新たな導線や家具の配置にセキュリティ面の配慮など、検討すべき点は数多くあります。
どのスペースがどの程度必要かは、会社によって異なるもの。専門家によるアドバイスに頼りながらレイアウトを決めていくのがおすすめです。

・システム導入や配布ツールの準備

社外から社内ネットワークにアクセスできるよう、システム方式の整備が必要になります。オンラインでの勤怠管理ができる仕組みを導入し、リモートでも部下の仕事の進捗や評価ができるようにしなければなりません。基準を明確にし、社員から不満が出ないよう周知しておきましょう。
同時に社外で働く際に必要なノートパソコンやスマホ、モバイル端末なども準備しなければなりません。新しいシステムの使い方やリスクを回避するための、セキュリティ意識を高める教育も必要になるでしょう。ルールを作成し、ネットワーク環境を整えること。社外で扱う個人情報や経理情報をどうすべきかを、慎重に検討しておきましょう。

・サテライトオフィスを検討する

自社以外のシェアオフィスやコワーキングスペースを使用したい場合には、サテライトオフィス運営会社と契約して、他企業と共同で使用することもできます。
セキュリティの確保や利用時間の制約などについて確認しなければなりませんが、他者との交流によってビジネスの幅が広がる、契約先オフィスのイベントや講演会に参加できるなどのメリットもあります。自社でサテライトオフィスを設置し、自社専用の施設として運用する企業もあります。
社員同士が部署を超えて利用できる場所を設置することで、本社とは異なるコミュニケーションが生まれる可能性が高まります。自社だけのセキュリティ機能を導入できるため、リスクを軽減させる効果も期待できるでしょう。
デメリットは契約や内装に費用はかかること。自社で運営や管理をしなければなりませんが、アウトソーシングにて解決する場合もあります。

オフィスイメージ

5.ABW導入の注意ポイント

従来の働き方と大きく異なる、ABWならではの注意ポイントについて解説します。導入前にしっかりとチェックしておきましょう。

コストを把握する

コスト削減を目的にABW導入をする場合、導入によって削減できるコストを把握しておいてください。シミュレーションによって費用効果を確かめたうえで、下記のようなABW導入によるコストも比較しておきます。

  • ・新しいオフィスにかかる費用
  • ・社外で使用するツールや新しいシステムの導入費用
  • ・不要品を廃棄する費用
  • ・新オフィスへの引っ越しとレイアウトにかかる費用

ABWを導入した場合には、下記コストの削減が期待できます。

  • ・スペースや場所を変更することによる賃貸料の削減
  • ・電気代や水道代など
  • ・通勤手当
  • ・プリンタやコピー機などオフィス機器の削減

導入時と導入後の費用を想定し、費用対効果が出るような計画を立ててみてください。

社員のコミュニケーションについて検討

オフィス内にて対面する機会が減るため、社員同士のコミュニケーションが希薄になる恐れがあります。特に上司の目が届く範囲に部下がいなくなるため、従来の方法ではフォローしきれないこともあるでしょう。孤立してしまう社員が出てくる恐れもあるため、今まで以上に注意が必要になるかもしれません。オンラインならではのコミュニケーション能力が高められるよう、セミナーなどを実施することも大切です。社員同士のつながりが感じられるよう、上司やチーム全体でフォローし合う体制を整えていきましょう。

評価基準の制度を整える

社員それぞれが主体的に仕事をおこなうABWでは、オフィス内にて受動的な働き方をしていた社員にとっては大きく働き方が異なります。
会社の理念に共感し、より積極的に仕事に取り組む姿勢が求められるようになるでしょう。
業務時間や働きぶりなどの姿勢よりも、確かな成果を上げることが評価につながります。
評価ポイントを明確にし、社員同士に公平感があることを伝達すること。自由な働き方を叶えるABWだからこそ、働く目的を明確にし、成果を可視化することで自律性を育成するような評価基準を設けることを検討してみてください。

6.まとめ

社員にとっても企業にとってもメリットをもたらすABWですが、導入前にメリットや注意ポイントをおさえ、慎重に計画を立ててみてください。
導入企業では新たな働き方によって社員のモチベーションがアップし、採用時にも優秀な人材にアピールできたという事例もあります。ABW導入時には社内だけでは解決できない問題も多々発生するため、コンサルティング会社に頼ることも検討してみましょう。新オフィスへの移転やレイアウト変更、システム導入や新しい運用についてトータルでサポートできるプロがいれば、初めてのABW導入でも心強いものです。社員がより効率良く、無理なく働ける新しい環境を作る方法について、ぜひ前向きに考えてみてください。

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